他社がつくったシステムを引き継ぐときに確かめること
・書いた人 山本 健太
前の業者がつくったシステムを、別の人に引き継いでもらうとき、何を確かめればいい?
最初に確かめるのは、システムの中身よりも「誰が何を持っているか」です。ドメイン、サーバー、ソースコード、データ、外のサービスのアカウント。それぞれの名義が誰で、誰がログインできるのかを書き出してください。
名義とログインの鍵がお客さんの手元にあれば、たいていのシステムは引き継げます。資料が残っていなくても、コードと動いている環境があれば読み解けます。逆に、名義が前の業者のままのものは、関係が切れる前に移しておくのがいちばん大切です。
引き継ぐ前に、手元に揃えたいもの
すべて揃っていなくてもかまいません。分かるものから書き出すと、引き継ぐ側が「何が足りないか」をすぐに判断できます。
| もの | 確かめること |
|---|---|
| ドメイン | どの会社で取ったか(お名前.com など)、名義、ログインできる人、更新の期限 |
| サーバー・クラウド | どこで動いているか、契約者、ログインできる人、毎月の請求先 |
| ソースコード | どこに置いてあるか(GitHub など)、最新のものか、お客さんが受け取っているか |
| データベース・データ | どこにあるか、バックアップがあるか、書き出せるか |
| メール | 会社のメールがどこで動いているか(ドメインの設定を変えると止まることがある) |
| 外のサービス | 決済、メールの配信、地図、Google アナリティクス、Search Console などのアカウントと請求先 |
| 管理画面 | お知らせの更新などに使う管理画面の URL と、ログインできる人 |
| 契約と書類 | 契約書、見積書、請求書、仕様書や設計書(あれば)、前の業者とのやりとりのメール |
ドメイン
確かめることどの会社で取ったか(お名前.com など)、名義、ログインできる人、更新の期限サーバー・クラウド
確かめることどこで動いているか、契約者、ログインできる人、毎月の請求先ソースコード
確かめることどこに置いてあるか(GitHub など)、最新のものか、お客さんが受け取っているかデータベース・データ
確かめることどこにあるか、バックアップがあるか、書き出せるかメール
確かめること会社のメールがどこで動いているか(ドメインの設定を変えると止まることがある)外のサービス
確かめること決済、メールの配信、地図、Google アナリティクス、Search Console などのアカウントと請求先管理画面
確かめることお知らせの更新などに使う管理画面の URL と、ログインできる人契約と書類
確かめること契約書、見積書、請求書、仕様書や設計書(あれば)、前の業者とのやりとりのメール
引き継ぎで、よくある落とし穴
- ドメインの名義が、前の業者のまま。 ドメインはサイトとメールの住所です。名義を移せないと、サイトの移し替えもメールの設定も思うように進みません
- サーバーが、前の業者のまとめての契約の中にある。 業者が契約をやめると、サイトごと止まることがあります
- ソースコードを受け取っていない。 動いているサーバーの中にしかない、業者の手元にしかない、というケースです
- 契約で、つくったものの権利がどちらにあるか決まっていない。 手を入れてよいかに関わります。気になるときは契約書を確かめ、必要なら法律の専門家に相談してください
- 外のサービスの請求先が、前の業者。 支払いが止まると、そのサービスにつないでいる機能が止まります
- ドメインの設定を変えたら、メールが止まった。 サイトとメールが同じドメインの設定に乗っているときに起きがちです
- 証明書(https)の更新を、前の業者が手でやっていた。 期限が切れると、ブラウザに警告が出てサイトが開かれなくなります
前の業者と連絡がつかないときは?
お客さんの側でできること
- ドメインを取った会社と名義を調べる。名義がお客さんの会社なら、その会社に問い合わせて手続きを進められることが多いです
- サーバーやクラウドの契約者がお客さんなら、その会社に契約者として問い合わせて、ログインできるようにしてもらう
- 請求書やカードの明細から、毎月お金を払っているサービスを洗い出す。そこから、何を使っているかが見えてきます
- 前の業者とのメールや書類を集めておく。アカウントの情報や、つくったときの経緯が残っていることがあります
どうにもならないこと
- 前の業者の名義になっているアカウントやドメインを、本人の手続きなしで移すこと(各社の規約しだいで、時間がかかるか、できないことがあります)
- どこにも残っていないソースコードを取り戻すこと。公開されている画面やファイルから組み直すことはできても、元のものと同じにはなりません
- 分からなくなったパスワードを調べること。サービスの側でやり直してもらうことになります
引き継げるかどうかは、何で決まる?
引き継ぐ側は、中身を見せていただいたうえで、次のようなところから判断します。
- ソースコードとデータが手に入るか
- いま動いている環境(サーバー、使っている言語や部品のバージョン)に、ログインして手を入れられるか
- 使っている部品が古すぎて、安全に動かし続けられない状態になっていないか(作り手の更新が止まった部品など)
- 直して使い続ける費用が、つくり直す費用を大きく上回らないか
「引き継げない」と判断するのは、コードやデータが手に入らないときや、古さのために直すよりつくり直したほうが安く安全なときです。その場合も、いまのシステムを動かしたまま、新しいものへ少しずつ移すやり方を一緒に考えます。
資料が残っていなくても、引き継げる?
多くの場合、引き継げます。設計書がなくても、コードと動いている環境があれば、次の順で読み解いていきます。
- いま動いている画面を、ひととおり触る(誰が、何のために、どう使っているかをうかがいながら)
- 画面ごとに、裏側のコードでどんな処理をしているかを追う
- データベースの組み立て(どんな情報を、どうつないで持っているか)を見る
- 外のサービスとのつながり(決済、メール、ほかのシステム)を洗い出す
- 本番と同じものを手元で動かせるようにして、安全に試せる場所をつくる
- 分かったことを、次の人も読める引き継ぎの資料にまとめる
引き継いだあと、最初の 1 か月でやること
- アカウントとドメインの名義を、お客さんに揃える。ログインの情報は、お客さんと引き継いだ側の両方で管理する
- バックアップを取り、実際に戻せることを確かめる
- 止まったら通知が届くように、見張りを設定する
- ドメイン、証明書、サーバーの契約の期限を一覧にする
- 急ぎのセキュリティの更新があれば、先に当てる
- 次に何を直すか、優先する順番を決める
WordPress のサイトを引き継ぐときは
WordPress は手軽なぶん、更新が止まったまま何年も動いているサイトがよくあります。引き継ぐときは、次を確かめます。
- 管理者のアカウントが、お客さんにもあるか。見覚えのない管理者がいないか
- WordPress 本体、テーマ、プラグイン、サーバーの PHP のバージョンが古くなっていないか
- 有料のテーマやプラグインのライセンスが、誰の名義か(前の業者の名義だと、更新を受け取れなくなることがあります)
- 本体やテーマを直接書き換えていないか(更新すると、その手直しが消えます)
- バックアップを取っているか、どこに残っているか
まとめ
東山紡では、他社がつくったシステムの引き継ぎをお受けしています。中身を拝見して、引き継げるかどうか、どこに手を入れるべきかを正直にお伝えします。くわしくは保守・運用と引き継ぎのページをご覧ください。